捕食者の季節
『これだけ?』

白衣を羽織りながら渡辺検視官が松下に尋ねる

松下と坂本が
車両でこちら―署に向かっている時点で

現場の北川刑事課長から
"検死及び損壊に使用した器具の推定"が目的だと

渡辺は指示を受けていた


『釣り客が帰って来たんかいと思うた』

銀縁の眼鏡越しに松下を見ながら
バインダーとボールペンを棚から取り出す


松下は
『手首だけのホトケやからなあ』
そう答えながら

白手袋に透明ビニールの手袋を重ねた手で
切断された手首を取り出す

50センチ四方
腰の高さのステンレス台に置かれた
"それ"の外形を渡辺は無言でじっと見ている
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