捕食者の季節
『ナベさんが分からんっちゅうんやから』
―損壊器具の特定は無理

松下は
そう受け取るしかない

何しろ
刑事としてそれなりに長い経験を持つ松下でさえ
"こういう"切断された死体を目にするのは初めてだ


『それにしても―』
先に口を開いたのは渡辺検視官だった
『今日は暑いの』


松下は部屋中に突き刺すような腐臭が充満していたなことに
初めて気が付いた

それは
渡辺検視官も同様で

―何を使って腕を切断したのかを
考えること自体を放棄したが故に、この異様な臭気に気づいたに違いなかった

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