捕食者の季節
『そやけどな、一つだけ分かったことがあるで』

窓を開けて
新鮮な外気を部屋に入れながら背中を向けたまま渡辺検視官が話した

『何ですやろ?』
顔をしかめながら手首だけの遺体を
慎重にクーラーにしまう

松下も背中越しに返答した

―まあ大した発見やないやろ
半ば諦めたような
ふぬけた表情がそう物語っていた


『生体反応や』

―は?
渡辺検視官の思わぬ指摘に松下の緩んだ頬が
陶器のように強張った

『信じがたいことやがな。松さん、あれ生きたまま切断されとるで』

―ビクンッ
松下の上体が電気を流されたカエルの足のように

弾けた
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