捕食者の季節
『ああ松下さん』

松下の姿を見つけた一人の年配の消防署員が駆け寄ってきた

所轄が長い松下とは顔馴染みの署員は、北川を怪訝な顔で一瞥した

『ああ、こちらは新しい刑事課の課長や』

合点がいったらしく
小柄な消防署員は
『これは失礼しました。小林と申します』
直立して敬礼をする。

北川は穏やかな表情で
『北川です、こちらこそよろしく』
と歩きながら敬礼を返した


(いちいち調子の狂う課長さんやなあ)
偽らざる松下の本音だった

階級が警視ともなれば
もう少し"わざと"ぞんざいな『ふり』くらいするものだと思う。

北川の
妙に爽やかな振る舞いが
およそ警官らしくない

松下にはそのように思えて仕方ないのだ。
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