宇宙ネコ
──次の日の朝──

「エネルギーが足りない…ですか?」

「うん
発電所からの電力じゃね
あの程度はあってもなくても変わらない位の規模なんだよ」

ボクはまた三角楽博士の所に来ていた。
あの実験を本番で行うには、莫大なエネルギーが必要になるそうだ。
そりゃそうか、この星を何とかしようって程なんだし。

「そんなエネルギーなんてどうにかなるもんなんですか?」

「我々人間などちっぽけな存在なんだよ
そんな事が可能だとすれば神のみだろう」


おや?

何かおかしいな。

論理上には全ての問題は解決してるみたいな感じだったのに。

三角博士は手袋をすると落ち着いた手付きで、アルコールランプにかけたビーカーを取った。

「88度か…いい感じだ」

前は90度だったから、あれから2度も下がった様だ。

「神など信じちゃいなかったがね…
どうやら何らかの神の様な存在は本当にいる様だよ」

そういう三角楽の目は、いつになく厳しい眼差しだ。
これから三角博士がやろうとしている事は、神のみが可能な事で、その神は存在しているらしい。

「神様にお願い…なんて三角博士もロマンティストなんですね」

「だろう?
科学者は純粋でロマンティストなんだよ」

三角博士の入れてくれる紅茶はとても甘い香りがして美味しい。

これでカップがビーカーでなかったら文句なしなんだけどな。
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