宇宙ネコ
三角博士はフラスコに水を入れ、それをアルコールランプの上の台にのせ、まるで科学の実験をするかの様に紅茶の準備をした。

「キミ、ちょっとこれを見ててごらん?」

三角博士はじきに沸騰しはじめた湯に棒状の温度計を刺しボクに見せた。
温度計のゲージは徐々に上がり、やがて止まった。

「90℃辺りを指してますね‥あれ?」

水の沸点は100℃だった様な。

「もちろん、この温度計はおかしくはないよ?」

まさか、くじ引きでハズレた事で、水の沸点が90℃になったのだろうか?

「あの、何となく分かるような分からないような感じはしてるのですが
もう少し簡単に話していただけませんか?」

三角博士はアルコールランプの火を消してからフラスコに紅茶の葉を入れると、砂時計を脇に置いた。

「ワシは紅茶を入れる為に毎回お湯の温度を測ってるんだけどね、
段々と沸騰する温度が下がってきてるんだ
おかげで少し湯を冷ます必要がなくなったよ」

「温度が下がってる・・?
それはどういう事なんでしょうか?」

「例えば、この施設は国から予算をもらって維持出来てるのは知ってるよね?」

「えぇ、それはわかります」

「もし、予算がなくなったらその内維持出来なくなっちゃうよね」

三角博士は紅茶をビーカーに注ぎ、ボクに差し出しながらそう言った。

「そうで‥す‥えっ?あちっ」

ボクがある事に気がついたとたんに、三角博士は真顔になり

「その動揺、どうやら分かった様だね?」

三角博士は紅茶をずずっとすすってふーっと息をついた。
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