姫様とウサ耳はえた金髪童顔
頭からの血が、川の源泉のように首(丘)を下っていく。
牙の隙間からひゅうひゅうと壊れたラッパみたいな呼吸をケルベロスはしていた。
「……」
自分で倒してなんだが、直視できるものじゃなかった。
目を背ける、背けようとした。
「姫……」
彼女がケルベロスに近づかなければ。
危ないというクロスの声に気づいたか、赤い髪を揺らし彼女はこちらを見た。
「あなたたちの傷はすぐに治しますから。少しだけ待って下さいね」
大丈夫です、と言って彼女はクロスから目を離した。
「姫……っ」
「行かせてやれ」
立ち上がろうとしたクロスをロードが止める。
相変わらず、硬直したままの体でありながら。
“彼女の邪魔をするなら殺す”
と、目だけで伝えてくるのだから、クロスは座ったままでいるしかなかった。