弓狩り-ユミガリ-

迫る罠



次の日の朝、更に悪い知らせが私の耳に入ってきた。

会計を担当している二年生の日高君が昨日の夜、通り魔に襲われて右腕を負傷してしまったのだ。


「和樹…」


「お前がそんな顔すると余計重いんだよ、いつもの仏頂面に戻れっての」


「……」


思っていた以上に怪我が酷く、病院でも大会出場は厳しいと言われてしまったと日高君から聞いたが、二年生にとっての県大会はこれからの全国争いをかけた大事な試合なのだ。

梓は日高君と小学生の頃からずっと一緒で、いいライバルでもあった。
梓が暗い顔をするのも無理はない。


「今はとりあえず、俺みたいな奴をこれ以上出さないようにするのが第一だ。そのためにはお前がしっかりしてないといけないだろ…?」


「あぁ、無論だ」


「心配すんな、インターハイにはお前が足手まといだって思う位にしてみせるからよ」


「俺が足手まといだと…いいだろう、楽しみにしておく」


「樋山、二人を頼む。この中でまともなのはお前だけだし、上手く纏めてくれ」




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