多幸症―EUPHORIA―
『梨依ちゃん?泣いてるの?』
眼を開けると、目の前には心配そうにあたしの顔を覗きこむ男の子がいた。
頬に涙が伝っている。
『ううん、だいじょぶだよ』
あたしは眼を擦りながら、起き上がり首を振った。
『待たせちゃったね。帰り際、国分のやつが生徒会の仕事押しつけて来たから逃げて来た』
そう言って、大好きな男の子はあたしに笑顔を浮かべた。
他人から見たらどうでもいいかもしれないけど、これがあたしの幸せ。
『ん? じっと見て、どしたの? まだ寝ぼけてる?』
『ううんー。幸せだなぁ、って』
あたしは言いながら、頭を傾げる彼の頬に、そっとキスをした。