王子様と幼馴染
「他には、誰がいるんだろ…」
ハ行から更に上へと目線を上げる。
そして私の目は、サ行のところで、ピタと止まった。
そうさせたのは、そこに書かれていた一つの名前。
佐伯 李音
「…りおん」
誰にも聞こえないであろう小さな声でつぶやく。
私が密かに思い続けている幼馴染の名前がそこにはあった。
もちろん同じ学校であるのは知っていたけれど…
まさか同じクラスになれるとは思ってなかった。
「亜季ちゃん、どうかしました?」
隣にいた鈴が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「う、ううん。なんでもないの!行こう、鈴。」
「えぇ。」
そして他愛無い話をしながら、
私たちは二年三組へと歩きはじめた。