無愛な恋人
どうしよう。
わたしのせいだ、全部。


先生がケガしたのも、サイン会が中止になったのも。




「ちょっと君!こっちきなさい!」


救急車に乗せられていく翔一先生を見つめていたら、係員が声をかけてきた。

……めっちゃ、怒ってる。





何分たったんだろ。

わたしは係員にものすごく叱られた。



…けど、わたしには係員の声は届いてなかった。

だって、翔一先生が気になって。

わたしのせいで、仕事休業になったらどうしよう。




「…今日はもう、君も帰りなさい」

「あ、あのっ、先生の住所教えて下さいっ」


聞いてどうするのかなんて、考えてなかったけど。

聞いといた方がいい気がした。




「……俺が教えたって、言わないでくれよ」

はぁ、と溜息まじりに呟く係員。



なんで教えたこと、人に知られたらマズイんだろ?

人気漫画家だから??




係員はさらさらと、メモ用紙に住所を殴り書いている。

場所はここから20分くらいのところ。

結構近いんだ……。





「ありがとうございます!」


わたしは素早く係員からメモを奪うと、お礼だけ言って走り出した。


向かう先はもちろん、翔一先生の家!
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