無愛な恋人
「え、ここ……なの?」
わたしはメモに書いてあった住所を見つけ、固まった。
だって、高級マンションしか見えないよ?
まあ、人気漫画家なら普通なのかな……。
マンションに不釣り合いな子供なわたしは、緊張しながら翔一先生の部屋を探した。
1階、2階、3階…。
あれ?
ないんですけど、翔一なんて名前のとこ。
「あ、……」
よく考えたら、翔一ってペンネームじゃんか!
今までの努力、超無意味!
「どうしよ〜〜」
わたしは床に座り込んだ。
会うのは不可能と気づいて、体から力が抜けてしまった。
……ちゃんと謝ることも、できないの……?
「……真琴」
背後から、カッコイイ声が聞こえて動けなくなった。
声優並なんですけど、声。
後ろを見る勇気が無いよ!
だって、本物の声優だったらどうするよ?!
わたし、声優ヲタクなんだもん!
「聞いてんのか、テメェ」
「った!」
頭の中で妄想を繰り広げていたら、後頭部に激痛が走った。
さすがに今回は、振り返るしかないな…。
だって、声恐くなったし。
わたしは顔をゆっくり、後ろに向ける。
「……え゛?!」