兎
「……うっ…」
「起きたか、架鶴帆」
薄暗い部屋。
頭がクラクラする。
「……里長……様?」
「すまんな架鶴帆、全ては里のためなんだ」
俯いて顔をあげない里長。ふと自分の格好が変わっていることに気付いた。
「あの…あたしは今からどぉなるんですか?」
綺麗な着物。
吟珥と同じ紅葉色の着物だ。髪も綺麗に整えられている。
そしてそれとは不釣り合いな手枷と足枷。
「………っ…里は干ばつに苦しんでおる…雨を降らすにはもぉ山神様に巫女を捧げるしかないんじゃ!!」
「……捧げ…る?」
死ぬの?
里のために?
手枷をはめられた両手を握りしめる。
「2日後、儀式を行う」
そう言うと里長は出て行ってしまった。
心が不安でいっぱいになる。
恐怖で握りしめた手が震えだした。
「………吟珥……っ」