兎
「今日で7日目……」
今日も架鶴帆は姿を現さない。
「………なんか嫌われるようなことしたかな……」
相変わらず兎は足元を跳び跳ねる。
「架鶴帆、時間だ」
「…………」
1週間水しか口にしていない。
喋る気力もない。
「…………ギン…ジ……」
涙が頬を伝う。
突然いなくなって吟珥は怒ってるだろうか、それとも私のことなんか忘れてしまってる?
山神様ってどんな人なんだろう、怖いのかな?優しい人だったらいいのに……
いろんな考えが頭を巡る。
やっぱり最後に吟珥に会っておきたかった。
「吟珥………」
手枷と足枷が外される。
「架鶴帆!!!?」
足が、勝手に動いた。
吟珥に会いたい。
これが最後でもいい。
吟珥に「さよなら」だけ言わせて……。
引き止めようとする手をすり抜け桜の樹に走った。