兎
月が紺色の空に登る。
「……………」
そろそろ……
「潮時か……」
『神に等しき存在が人界に干渉してはなりません』
人間に関わると情が移る。
「………架鶴帆」
少女に初めて会ったのは1年前。
その時もこの桜の樹の下だった。
『綺麗な髪ね』
顔をあげると小さな少女がこちらを覗きこんでいる。
『………俺が……見えるのか?』
いや、まさか人間に見える筈が、
『……綺麗な目……』
目が合った。
咄嗟に下を向いて顔を隠す。
何故、俺が見える!?
『どぉして顔を隠すの?』
『……お前、俺が怖くないのか?』
チラッと顔を見るとキョトンとした顔でこちらを見ている。
『貴方、人間じゃないの?』
その言葉にビクッと肩が震える。
『……貴方の名前は?』
にこっと笑いかける少女。
『私は架鶴帆!!貴方の名前は何て言うの?』
『……………吟珥……』
ボソッと呟くように言うと架鶴帆は嬉しそうに笑い俺に手を差し伸べる。
『友達になりましょ吟珥!よろしくね♪』