兎
別れ
「……はっ…っ!はぁはぁ……」
吟珥!
吟珥!!
慣れない着物と裸足のせいで足や腕のあちこちに傷ができた。
今夜は満月。
遠くからでもわかる。
月明かりに照らされて、桜の樹の葉が一枚一枚光ってみえる。
きっと吟珥はあそこにいる。
やっとのことで桜の樹に辿り着くと足は血まみれで自分で見ても痛々しい。
「………ぎ…吟…珥?」
息があがって上手く呼吸ができない。
「………吟珥?……いないの?」
涙がこみあげてくる。
ズキズキ痛む足を引きずりながら桜の樹の下まで歩きうずくまる。
「……ウッ……痛いよ、吟珥…ヒッ…ク」