「たくっ!どぉしていきなりいなくなるんだ」


俺は兎を抱き抱え山道を歩く。

兎が突然走り出しなので仕方なく探しに山へ入っていた。


やっと兎を捕まえ桜の樹に戻ってみると


「……………架鶴帆?」


樹の幹の元に小さな影がうずくまっていた。


「……吟珥?」


架鶴帆は顔をあげ立ち上がり近づいてくる。


「どぉした?何で泣いてる?」


すると架鶴帆は何も言わず俺の着物の裾を掴み下を向いた。


「?……架鶴帆?」


『架鶴帆!!どこにいる!!』

ビクッと架鶴帆の肩が跳ねる。

「里の人間?」

振り向くと遠くから灯りが近づいてくるのが見える。

架鶴帆を探しているのか?ふと架鶴帆に目をやる


「架鶴帆?」


架鶴帆が震えている。


「どぉした?」


屈んで様子を見てみるが一向に何も話そうとせず下を向いたまま首を横に振るだけ。


どぉしたものかと悩んでいると架鶴帆の格好が目に入った。


「その着物、どぉしたんだ?」


そっと頭を撫でながら聞いてみる。




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