兎
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新緑も美しい夏の桜の樹の下で、膝を抱え肩を震わせる少女。
「…ヒッ…ク…ふぇ…」
そこへ1人の青年が近づく。
「架鶴帆どぉした?」
腰まである銀髪を高く結い上げ、色鮮やかな紅葉色の着物を肩に羽織っている。
「吟珥…」
頬に伝う涙を手のひらで拭いながら架鶴帆(カズホ)と呼ばれた少女が振り向いた。
「また苛められたのか?」
吟珥(ギンジ)と呼ばれた青年は、柔らかく笑いながら少女の頭を撫でる。