「……架鶴帆?」


風に煽られ一層炎は膨れあがる。


「架鶴帆!!」


ふと架鶴帆が立ち止まり顔だけ振り返る。


「………吟珥?」


驚いた顔。


「架鶴帆!!お前、何やってるんだ……危ないから早くこっちに…………!?」


手を差し出そうとするが体が動かない。
まるで金縛りにあっているかのように指先すら動かすことができない。


「なんで……!?」

「吟珥……今までありがとう」

「なんだよ今までって………」


訳もわからず涙が頬を伝う。


「………ごめんね?」

「お前が謝ることなんて何もないだろ?」


架鶴帆はまだ何か言いかけたが、里長が出てきて架鶴帆を促した。
そしてゆっくりと踏み出される足。


「何……を………」



炎は架鶴帆を包み込むかのようにまだ小さい体を呑み込んだ。

着物は焼け落ち白い背中が露になる。


髪の焼ける音。


肉の焦げる臭い。





「……っ!架鶴帆ぉー!!」






最後の笑顔。











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