程なくして祭壇は架鶴帆ごと焼け落ち、不思議に自然と炎は消え白い煙が上がる。


そして


ポッ…ポツ…


「…………雨?」


気づく頃には着物がぐっしょりと重たくなるほどの大雨。
気づけば体は動くようになっていて、空を仰ぐと涙とともに雨粒が頬を濡らしていく。






「あっ……雨だ!!」

「やった!!これで畑が生き返る!!」

「山神様に生け贄が届いたんだ!!」


焼け落ちた祭壇の周りで里の人間達が口々に歓喜の叫びをあげている。



「………生け……贄?」



『聞いて?吟珥』


頭の中で何かが崩れる音がする。


『私ね……たぶん』


握る拳からポタポタと鮮血が滲んで足元を染める。





『吟珥が好きだったよ』







響き渡る狼の遠吠え。



銀色の毛並みは月の光を受け自身から光を発しているように輝いている。



その眼はまるで血に濡れたように……紅い。



悲しみの色。






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