兎
尊
季節外れの花が咲き乱れる日本庭園。
中でも樹齢1000年を超す桜の樹は、満開の薄桃色の花弁を身に纏い、一層華やかに存在を主張している。
「変わらんな、この屋敷も……」
「久しいですね、吟珥」
不意に背後から声をかけられる。
顔を見ずとも誰だかわかる。
懐かしい声。
静かに声の主の方へ振り返る。
「……姫様も」
300年経った今も変わらぬ容姿。
「お久しぶりです」
目の前で上品に微笑む少女の瞳は自分と同じ紅い色。