「だって…みんなが吟珥なんて…いないってぇ…」


喋りながら涙が溢れてもぉぐちゃぐちゃだ。
吟珥は困ったように眉を下げ「ハハッ」と笑った。


「しょうがないよ」

「…ヒッ…ク…どぉ…して?」


しゃくりあげながら首を傾げる少女はとても愛らしい。


「俺は架鶴帆にしか見えないんだ」

「そんなの…吟珥がかわいそう!」


あぁ、なんて優しい娘なのだろうか。
このような妖など見えてしまったばかりに周りに冷たい目で見られる。
俺が守ってやらなければ。


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