兎
「約束は………守れませんでしたか?」
真っ直ぐ目を見つめてくる。
約束………。
命令や言霊の力で縛りつけるものではなく『約束』。
「…………申し訳………ありません」
「………余程、辛い事があったのですね」
バッと顔を上げると正面で目が合う。
憐れみでもなく、同情でもない悲しい瞳。
「それは………」
「それでも罪には変わりありません」
凛とした揺るぎない声。
頬に触れる手から震えているのがわかる。