夏休みも間近な7月中旬。

五月蝿い蝉の鳴き声が暑さを更に倍増させる。



「あっつーい!!」


手に持った下敷きでパタパタと顔を扇ぐと背中まで伸ばした髪がフワリと揺れた。



「桜〜!」


朝っぱらから廊下で大声をだすのは、親友の佐月 楓(サツキ カエデ)


「なぁに〜?」


ギラギラと照りつける太陽を横目にダルそうに返事を返すが、そんなことは気にも留めず楓はニコニコと前の席の椅子に後ろ向きに座った。


「ちょっと聞いてよ〜」


あぁ、この顔は……


「また男でしょ」

「正解!!すっごいイケメンなの〜」


このメンクイが!!


「この前告られてた先輩は?けっこう人気なんじゃなかったの?」


すると楓は顔の前に人差し指を立て、ずいっと顔を近づけてきた。


「ちっがうのよ〜」

「何が違うのよ」

「先輩はべ・つ!今朝見たイケメンは〜何て言うか………目の保養?」


この性格さえ直せば可愛い系でモテモテなのに。


「勿体ないなぁ……」

「何か言った?」

「何にも〜?」



怖いコワイ。


また下敷きで風を造る。




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