ふと窓の外を見ると何かが目の前をフワリと飛んだ。


「………揚羽蝶?」


黒い揚羽蝶が私の目の前をふわふわと舞っている。


「綺麗な羽……」



ふわふわと風に流されるように飛ぶ揚羽蝶は、ひらひらと宿の花を求めて飛んで行ってしまった。



「行っちゃった……」

「ねぇ〜桜聞いてるの?」


正面に向き直ると楓が頬っぺたを膨らましてこっちを上目使いに睨んでいる。

おっといけない、全く聞いてなかった。


「聞こえてるよ?」

「聞こえてるかじゃなくて!聞いてるのか聞いてるの!!」


なんかややこしいなぁ……。


「聞いてるって!」


言ったと同時に始業のチャイムが鳴る。


「ほら!先生来るよ、自分の席に戻らなきゃ!」


楓はまだ何か言いたげな顔をしていたが渋々と自分の席に帰って行った。




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