兎
桜木
ギラギラと照り付ける太陽を横目で睨みながら、日影を探しつつ立ち寄った近所の小さな神社。
「涼し〜」
小さい頃からなにかあると必ず来ていた観守神社(カナモリジンジャ)
境内の奥にある大きな桜の木が大好きだった。
今日も境内の奥に足を進めると、いつもの桜の木。
と、葉と共に風に揺れる…………
「………銀髪?」
陽射しを浴びてキラキラ光る長い銀髪、黒い着物に紅葉色の模様が入り新緑によく栄える。
眠っているのか、俯いて動かない。
「…………綺麗」
小さな声で言ったはずなのに、その人はピクリと肩を揺らし顔をあげてゆっくりと周りを見渡した。
「…………怖っ」
怖いけど好奇心の方が勝ってしまう。
誰もいないと思ったのか、再び顔を伏せ動かなくなった。
そっと、そおっと近付く。
今度はピクリとも動かない。
顔を覗き込んでみたがグッスリ寝入ってしまっているようだ。
「…………綺麗な髪」
思わずその流れる髪に手を伸ばしてしまった。