兎
「……桜?」
冷たい手のひらが額におかれる感覚で目を開けた。
「…………ママ…?」
「体調悪いの?うなされてたけど」
心配そうな顔で覗き込んでくる。
窓の外を見ると既に陽は落ち月が空に登っていた。
「ん……大丈夫」
目を擦りながら起き上がると背中に手が回され支えてくれる。
「ありがとう」
それからご飯を食べお風呂に浸かっている。
「なんか疲れた」
変な夢をみた気がするけどあまり思い出せない。
『架鶴帆』
確か夢の中でそう呼ばれていた気がする。
「………………?」
目をとじてブクブクと湯船に頭まで沈める。
そういえば昼間の男の人も私のことを架鶴帆って呼んでた。
息を最後まで吐き出すと同時にゆっくりと顔を出した。
「……架鶴帆って誰よ」