兎
「おや、珍しい客人だ」
桜の大木の根元に座り夜空を眺めていたら直ぐ近くから声がした。
そちらへ振り向くと黒髪に金色の瞳の青年。
「あんたは……」
「隣、いいかな?」
言いながら俺が何か言う前に腰をおろす。
「吟珥君、かな?」
「何で……」
にっこり笑いながら桜の木を見上げる。
「お姫様が宜しくって」
「…………あんたは?」
こいつも人間じゃない。
「僕はこの土地の神様ってとこかな、元はこの桜の木に憑いてた守護神なんだけどね。あっ桜迦(オウカ)って呼んでね」
「この木の守護神……」
随分若く見える。
外見的な年齢は20歳そこそこだろうか。