兎
「500年前……」
桜迦が口を開く。
「土地神に1人の贄が捧げられた」
反射的に顔をあげる。
「それは」
「そう、桜ちゃん……いや、架鶴帆ちゃん、かな」
桜迦は少し悲しそうな顔をこちらに向けて話し出す。
「人間は神を絶対と信じてる、それが間違った認識でも、切羽詰まった状況ではまともな判断が出来なくなる」
何のことを言っているのか
「神は己から人界に手出しすることを禁じられているから、人と共にあることを選んだ君は凄いと思う」
雨。
「僕にはあの娘が救えなかった」
実体のない桜迦は濡れていない。
勿論、今の自分もだ。
「良い娘だよ、守っておあげ」