兎
千年庭
桜の花弁が舞う。
散っても散っても絶えることのないその花は美しく。
「お久しぶりでございます」
誰にでもなく声をかけ、足を踏み入れる。
500年ぶり、しかし、何も変わっていない風景。
記憶の底に張り付いた景色と比較してみる。
「花、増えてないか?」
苦笑いが漏れる。
「吟珥!!」
ああ、この声も変わらない。
きっと、振り返ればあの紅い瞳が此方を見て微笑んでいる。
そう思いながらゆっくりと振り返ると
「お久しぶりです、姫様」
美しい瞳と視線が合った。