兎
想う
不思議な人と出会ってから数日。
あれから神社に立ち寄ることもなくいつも通りの毎日、朝起きて学校に行っての往復。
明日は日曜日だ。
「いつもいるのかな」
もう一度会ってみたいとは思う、けど最初に言った架鶴帆という名前が気になってしまう。
どこか懐かしいような、切なくなるような響き。
「……吟珥」
この名前も懐かしいような、愛しいような響き。
初めて姿を見た時に綺麗だと感じた髪も瞳も、まるで最初から知っていたかのように違和感も感じずしっくりと自分の中に馴染んでいた。
あの紅い瞳を思い出すと何故か胸が苦しくなる。
「架鶴帆………」
誰なんだろうか、自分とそれほど似ているのか焦ったように名前を呼ぶ声。
「また、行ってみようかな」
約束もしたしね、と自分に言ってみる。