もてまん

「疲れていたんだね。

いねむり運転さ。

カーブを曲がりそこねて、壁に激突したそうだよ。

その日は、あたしの久しぶりのコンサートの最終日だった。

駆けつけて驚かせようと無理したのさ。

助手席には、キキョウの花束があったって。

警察から連絡来たのが、コンサートが終わって、皆でロビーで打ち上げしている時でね。

あたしゃ、生まれて初めて、気を失った。

警官がロビーに来て、ご主人が亡くなりましたって言われて。

何がなんだか分からなくなって、その後の記憶がないのさ。

気がついたら自宅のベットの中だった。

初めは、嗚呼、夢だったのかって思って。

でも、ベットの周りを、ジャックやジョセフィーヌが囲んでいてね。

ジョセフィーヌの顔は涙でぐしゃぐしゃで。

やっぱり、これは現実だったんだって。
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