もてまん
「僕の父さんも、父さんの母親が亡くなった時、やっぱり眠れない、食べれない病になったことあります。
ひと月位、寝込んでたかな……
母さんが、父さんは長いこと母一人子一人だったから、堪えるのよって。
爺ちゃんは父さんが中学生の頃亡くなったんだそうです」
「お婆様も苦労なされたんだろうね」
「爺ちゃんは大きな会社をやってたって聞いたことあるけど、その後どうなったんだろう。
僕が住んでる今の家は、父さん達が住んでた屋敷の一角だって聞いたことあるけど」
「きっと、お屋敷をお売りになったんだね……」
「で、婆ちゃんは一人でマンションに暮してた?」
「お婆様は、何でお亡くなりになったのかい?」
「僕はまだ小さくてよく解らなかったけど、心筋梗塞とか言ってたな。
一度発作で倒れて、それからは随分と気をつけていたんだけど……
僕は婆ちゃんが心配で、毎週、学校が終わると土曜の午後、電車に乗って神楽坂のマンションまで様子見に行ってた。
途中、駅の売店で、僕の好きなキャラメルとかカード付のお菓子をお土産に買っていくと、婆ちゃん、すごく喜んで、十倍位お小遣いくれてさ」
「そりゃ、ほんとに嬉しかったのさ」