もてまん

「そうですね……

婆ちゃん、ちゃんとカードケースにカードをしまってて、時々大事そうに見せてくれたな。

そして、月に一度位、母さんも一緒に行った。

母さんと一緒の時は、母さんの手作りクッキーかマドレーヌがお土産で、それも婆ちゃん美味しそうに食べてたな」

「お父様は?」

「父さんはその頃仕事が忙しくて、殆んど一緒に行けなかった。

母さんは、実験が始まると休めないのよって、わかった風に言ってたけど、婆ちゃんは寂しそうだった。

きっと、父さんも一緒に行ってたら、あんなに寝込むほど堪えることもなかったのにね。

僕は婆ちゃんといっぱい楽しい想い出あるから、婆ちゃんが死んだ時もあんまり悲しくなかった。

それより、時々苦しそうにして薬を飲んでたから、天国で楽になったかな、なんて子供心に思ったりしてさ。

それに、なんか変な感じだけど、死んでも婆ちゃんが側にいるような感じがしてた」



「わかるよ、その感じ」
< 106 / 340 >

この作品をシェア

pagetop