もてまん
「最初にこのマンションに来た時も、なんか婆ちゃんのとこにまた来たみたいな、変な感じがしたんだ」
「あんたのお婆さんに妬かれたかね」
「変なこと言いますね、千鶴子さん。
そんなこと言ったら、僕も繁さんに妬かれるってことですか」
「いや、すまないね、あたしの悪い癖さ。
余計なこと言っちまうのは……
あたしが運命的な出会いをあんたに感じたのと同じように、あんたも感じたのかと思ってね、ちょっと嬉しくなったのさ」
(運命的な出会いってなんだ? なんか、変な進展じゃないか?)
繁徳はなんだか身の置き場に困って、膝に乗せたままになっていたアルバムをもう一枚めくった。
(えっ、俺?)
そこには浜辺で横になっている、若かりし頃の繁の姿があった。
眼鏡をはずし、ちょっと目を細めて笑っている。
きっと眩しいのだろう。
その顔は、目元から鼻にかけての線が、繁徳によく似ていた。