もてまん
「そうさ。
でも、世間的には、立派な中年男性だよ、結婚してもおかしくはないさ。
実際、良い男だったしね。
写真見たろ?
その彼が、『君を失うくらいなら、結婚してもいい』って。
『結婚して一緒にフランスの田舎で暮らさないか』ってね。
ジャックにとっては一大決心だったんだと思うよ。
でも、あたしは断った。
兎に角、フランスを離れなきゃって一心でね。
で、戻るなり、このマンション買って、気ままな一人暮らしさ。
繁さんは、結構な資産家でね、随分とあたしに遺産を残してくれたのさ。
それに、自分の貯えもあったしね。
日本に帰ってからは、夜は時々パブで歌って、昼間はピアノのレッスンしたりして小銭を稼いでね。
それなりに楽しい人生だったよ」