もてまん
「またひとつ楽しみが増えたね」
千鶴子が嬉しそうに、目を細めて笑う。
「こうやって生きる楽しみを増やしていくのが、長生きのひけつだね。
繁徳に感謝、感謝」
三人でテーブルを囲む。
舞は美味しいといって、マフィンを三つも平らげた。
(さすが、女だ)
その様子を見ながら、繁徳は舞の機嫌が直ったことに安堵する。
そして自然と千鶴子に対する感謝の念を抱いていた。
千鶴子は舞にもあの紫色の名刺を手渡していた。
夜十時以降の電話は遠慮してくれと、千鶴子は同じ言葉を繰り返す。
千鶴子の誰に対してもぶれない態度に、繁徳は感心していた。
二人の様子を、繁徳は少し離れて静かに眺めていた。
穏やかな時間が過ぎていく。
不思議な三人の関係。
舞が繁徳を振り返る。
そして、嬉しそうに笑った。