もてまん
出会いは必然だった
八月。
浪人生にとっての夏は、苦手分野克服の山場。
予備校でも夏の集中講座がいくつも開設される。
繁徳も舞もそれなりに勉強に集中し、夏も予備校通いが続いた。
時折授業で顔を合わせることはあっても、繁徳と舞の関係は夏休み前とさほど変わりはない。
ただ、繁徳を見る舞の視線が、深く目の奥まで届くようになった。
(うん、舞、元気にしてるな)
舞のそんな瞳に出会うたび、繁徳は安心感する。
舞は、千鶴子との関係を深めるようにピアノ弾いた。
それは同時に、繁徳に近づく道でもあったのだ。
(俺も頑張んなきゃな)
繁徳は、明るく弾む舞の瞳を見て励まされた。