もてまん
小さな墓所の区画の草むしりをして、持ってきた雑巾で墓石をこすって、水をかける。
(婆ちゃん、綺麗になったぜ)
繁徳は両親と一緒に墓石に手を合わせた。
「さあ、次は繁叔父さんの墓だ」
「えっ?」
「お母様の弟さんよ」
幸子が正徳に続けて答えた。
(叔父さんの名前って、『繁』だったけ?)
ここ数年は両親と一緒の墓参りをすることはなかった。
繁徳は気が向いた時、といっても年に一度くらい、一人で墓参りをすることにしていたのだ。
当然、叔父の墓参りなどしたことは無い。
叔父には会ったことも無かったし、墓所の場所さえ覚えていなかった。