もてまん
「はい、岩下でございます」
「あの~、おれ、いや、僕、今日名刺をもらった、いや、いただいた……」
電話の声が昼間の会話とは違って、あんまりかしこまったものだったので、繁徳は慌てて、しどろもどろになった。
「あぁ~、あの坊やだね。随分とレスが早いじゃないか?」
電話が繁徳からだと判ると、千鶴子の口調は急にくだけたものになった。
「あの…すいません。
ぼく、なんか電話しなくちゃいけないかと……」
それでもやはり、繁徳の緊張は簡単には解れない。