もてまん
次の土曜、繁徳は久しぶりに千鶴子を訪ねることにした。
「あの、繁徳ですけど」
「あぁ、坊やかい」
電話に出た千鶴子は、悪びれもせず冷静だった。
「この間、多磨霊園で会ったの、千鶴子さんですよね?」
繁徳の口調は、すこしばかり千鶴子を責めているように厳しかった。
「ばれたかい?」
「見たらすぐ判りますよ。
色々聞きたいことあるし、今度の土曜、遊びに行っていいですか?」
「なんだい、怖いね。
いいよ。
あたしは何時でも暇だからね、待ってるよ」
電話の千鶴子は、悪びれないどころか少し楽しそうでもあった。
「じゃあ、二時に」
繁徳はそう言うと、無造作に電話を切った。