もてまん

「最初はさ、他人の空似だと思ってたんだがね。

あの日、あんたの名前を聞いた時からね……

そう、繁さんのお姉さんは、確か、黒澤って苗字だったな……ってね」


「なんだ、あの日からわかってたのか」


それは、繁徳が最初に千鶴子を訪ねたあの日。


「まぁ、最初は半信半疑ではあったがね。

色々話してるうちに、やっぱりって、確信したのさ。

あたしはわかって、色々話やすかったしね」

「なんか、俺は狐につままれたみたいな感じがします」

「でも、出会ったのは偶然さ」

「俺だって、出会ったのは偶然だと思うけど。

でも、偶然にしてはでき過ぎじゃありませんか?

こういうのって、何か大きな意味があるんじゃないかなって。

俺、色々考えて…」


そこまで言って、繁徳は急に口ごもった。

運命の出会いといっても、繁徳と千鶴子とでは、恋愛対象にしては年齢差があり過ぎる。
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