もてまん
「そんなの、考えたって判りっこないだろう?」
繁徳の戸惑う顔を、可笑しそうに覗きこみながら、千鶴子が続けた。
「出会う運命だったのさ。
運命の意味を考えるってのは、悪いことじゃあないがね。
その意味はいつか判る。
いつかね」
千鶴子にしても、今起こってる出来事の意味がはっきり判る訳ではなかった。
それでも、彼女は今まで運命に導かれて生きてきて、その結果がどういうものなのかを知っていた。
それが彼女の自信となり、表情に表れていたのだ。
(俺は経験浅いから、考えたって、運命の意味なんて判りっこない)
繁徳は、千鶴子の物知り顔を、少し忌々しい気持ちで見つめていた。