もてまん
「あたしとのデートはしてるじゃないか」
「えっ、これ、デートですか?」
「ある意味、デートだよ」
千鶴子が、楽しそうに笑う。
「じゃあ、シゲ、あたしともデートしてよ」
舞も楽しそうに笑う。
「マジかよ……」
二人の視線に、繁徳はたじろいだ。
「そうだ、今度の金曜の夜、二人であたしの歌、聴きにおいでよ」
千鶴子が、間髪いれずにそう言った。
「うわぁ、良いんですかぁ」
舞が、芝居がかったようなはしゃいだ声を出して喜んだ。
(デートなんて、困るよ、俺……)
繁徳の顔に浮かんだ当惑の表情に、千鶴子は気付かない振りを決め込み、威厳を持ってこう続けた。