もてまん
金曜日当日、繁徳の午前の授業は舞と一緒の英語だった。
舞は教室の後ろで、繁徳を引きずって隣に座らせると、授業中、せっせと繁徳にメモを回した。
『何時に何処で待ち合わせる?』
『千鶴子さんにお花とか買っていったほうがいい?』
『どんな格好で行くつもり?』
『デザートも頼んでいいかな?』
等など。
繁徳はその都度、できるだけ簡単に、時には○とか×をメモに書いて返していた。
(俺、舞と違って英語苦手なんだぞ)
必死で授業を聞こうと格闘する繁徳の横で、舞はセッセとメモを書く。
そんな繁徳の心の声は舞には届かない。
舞の楽しそうな笑顔を見て、繁徳は授業に集中するのは諦めた。
ショー開始は七時。
一度家に帰って着替え、六時半に渋谷109の前に集合することが決まる。
繁徳は舞から着ていく服装のチェックを受け、千鶴子への手土産として花を買うことに同意した。
そして、千鶴子の歌うダイニングバーへの道筋を確認。
後は授業の終わるのを待つばかりだ。