もてまん

金曜夕の渋谷の雑踏の中、

繁徳は気恥ずかしい気持ちで、待ち合わせ場所に向かっていた。


109の前には、繁徳の他にも沢山の待ち合わせらしい男や女が一杯いて、ちょっとほっとする。


「よっ、お待たせ」


繁徳がそんな声に振り向くと、一人が来て、二人が消えていく。

超美男子の相手がすごいデブのブスだったり。

反対に超絶美人の相手が、背の低い冴えない男だったり。


繁徳は慣れない待ち合わせに、十五分も前からこの待ち合わせ場所に立ち、そんな光景を楽しみながら眺めていた。

自分は、というと……

舞に言われて着てきた紺の綿ジャケット、ベージュのチノパン、白のカッターシャツという出で立ち。



(なんか、オリンピックの選手団衣装みたいだ)



舞が、大人の場所に行くんだから、とジャケット着用に拘ったのだ。

ウインドゥに写った繁徳の姿は、まさに隣に美少女が立ったら笑える冴えない男そのもので、彼は客観的に自分を眺めて落ち込んでいた。
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