もてまん

「なんだ、シゲ、違うの頼めば良かったのに」

舞が咎めるように、繁徳をじっと見た。

「めんどくさいよ……」


正直、面倒くさいというよりも、メニューを見ても良くわからなかったのだ。


「あたし、ソラマメのスープって好き。

冷たいやつかな?」

「お前って、意外とブルジョワなんだな。

アマダイのポワレって何だよ?」


繁徳の声には、少しばかりの棘があった。


「そういう訳じゃ……

あたしのお母さん、料理好きなのよ。

フランス料理のフルコースとか、たまに作ったりするし。

ポワレって蒸し焼きっていうような意味じゃないかな。

きっと、アマダイと野菜を重ねて蒸し焼きにしたところに、ピンクとか緑のソースがかかってるみたいなやつ。

あっ、あたしは料理、からきし駄目だよ。食べるの専門。

家でも、出る幕ないしさ」


舞は小さく手を顔の前で振って、否定のジェスチャーをして見せる。
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