もてまん
「たぶん、こうなるだろうと思ってね、絆創膏持ってきたんだ」
舞は、小さな白いバックの中から絆創膏を取り出した。
「最初から貼っておけば良かったんだけどね。
カッコ悪いじゃない、初デートだしさ」
舞は、再び繁徳の隣に腰を下ろすと、絆創膏の袋を破った。
「ゴミ、ちょっと持っててね」
舞の手が繁徳の手に触れた。
その瞬間、
繁徳は咄嗟に舞の手を握ると、舞を強く引き寄せた。
舞の身体が繁徳の方へ倒れ込む。
「シゲ、なに?」
顔を上げた舞の目と、繁徳の目が重なる。
繁徳には、今日までの偶然は、きっとこの時のためにあったのだという確信のようなものが沸きあがっていた。
繁徳は、舞の瞳をじっと覗き込む。
舞の大きな瞳に、公園の水銀灯の仄かなオレンジの光が映りむ。
(この瞳の中に、いつも映っていたい)
繁徳は舞の瞳に、自分の姿を映し込んだ。