もてまん
「で、舞はなんて答えたんだよ」
「ふふ、気になる?」
舞が目を細めて笑った。
「あのカラオケの日、シゲが小さな可愛い花束もって千鶴子さんのマンションへ入るの見た時、あたし本当にショックだった。
これはただごとじゃないなって。
絶対、年上の女がいるって。
学校でも、シゲの浮いた噂なんて聞いたことなかったし、シゲって女子と気軽に話すって感じでもなかったじゃない?
だから、結構女子の間ではシゲは謎の男って感じで、中には本気でホモじゃないかって疑ってる子もいたくらい。
あたしは、かえって安心だったけどね」
「勝手なこと言ってるんだな、女子って」
「で、安心してシゲを遠くから見ていたあたしとしては、天と地がひっくり返るくらいの衝撃だった訳。
シゲが出てくるまでの時間、どれくらいかな……
もう頭の中妄想で一杯で、シゲがОL風の年上の女といちゃついてるんじゃないかって想像して、気が狂いそうだった。
何で、もっと積極的に迫っておかなかったのかって、自分にはできっこないこと考えて、後悔して。
でも年上の女がいるから、あたしみたいな子供、相手にする気にもならなかったのかな、なんて考えたり……
だって、シゲ、あたしが話かけても、いつもそっけなかったじゃない?」
舞の視線が、繁徳を咎めるように捕らえた。