もてまん
父と母と
次の日の朝、繁徳は舞に迫られる夢にうなされ、目が覚めた。
時計を見ると、まだ、朝の六時。
夢の中の舞は、繁徳に唇に自分の唇を重ね、繁徳の手を自分の胸に引き寄せた。
繁徳の手には、舞の柔らかな胸の感触が今も残る。
(あぁ~っ、こんなんであと半年、浪人生活無事送れるか?)
繁徳は、舞の姿を頭からかき消そうと、ベットから飛び起きた。
「走るか……」
繁徳は、Tシャツとトレーニングパンツに着替えると、まだ空気の冷ややかな夏の朝の中へ走り出た。
高校三年の夏休み前まで、繁徳は毎朝ジョギングをかかさなかった。
周りが受験一色の雰囲気になり、何だか目標もないまま勉強にも身が入らず、いつしかダラダラと朝寝坊を重ねるようになったのだ。
目立ちたがりやのバスケ部の同級生達は、どこかしらに居場所を見つけて大学生になった。
浪人したのは繁徳一人。
でも、今となっては、この一年は必要な一年だったと繁徳は思っていた。
何の目標も持てないまま、当てもなく大学に通うよりは、浪人生活は彼にとっては居心地の良いポジションだった。